志馬クリニック四条烏丸

志馬クリニック四条烏丸 医療内容 多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)

多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)


はじめに

  • 多嚢胞性卵巣症候群(たのうほうせいらんそうしょうこうぐん:polycystic ovarian syndrome;PCOS)は、「特有の臨床症状、卵巣の特徴的所見、内分泌(ホルモン)異常」を主徴とする症候群※です。
  • 生殖年齢の女性の5−8%に発症し、月経異常や不妊の主要な原因の一つです。
  • 病態を一元的に説明するのは難しく、遺伝や環境など複合的な因子により発症すると考えられています。
    ※ 症候群:原因不明ながら、いくつかの症状が常に相伴って認められる場合につける医学的名称。

PCOS


特 徴

臨床症状
・合併症
■ 月経異常:無月経、稀発月経、無排卵周期症
■ 男性化:多毛、ニキビ、低声音、陰核肥大、骨格筋発達
■ 肥満:BMI≧25
■ 不妊:排卵障害
■ 内分泌疾患:II型糖尿病、高血圧症、脂質代謝異常、メタボリック症候群
■ 腫瘍性疾患:子宮内膜増殖症、子宮内膜癌
卵巣の
特徴的所見
■ 多数の小卵胞があり、卵巣が腫大
内分泌異常 ■ 血中男性ホルモン高値
■ 血中LH基礎値高値、FSH基礎値正常
■ インスリン抵抗性、耐糖能異常

※ 肥満指数 body mass index:BMI[kg/m2]= 体重[kg]/身長[m]2


診断基準

以下の1〜3の全てを満たす場合を多嚢胞性卵巣症候群とする
1.月経異常
2.多嚢胞卵巣
3.血中男性ホルモン高値、またはLH基礎値高値かつFSH基礎値正常
  • 月経異常は「無月経、稀発月経、無排卵周期症」のいずれかとする。
  • 多嚢胞性卵巣は、超音波断層検査(エコー)で両側卵巣に多数の小卵胞が見られ、少なくとも一方の卵巣で2-9mmの小卵胞が10個以上存在するものとする。
  • 内分泌検査(ホルモン検査)は、排卵誘発剤や女性ホルモン剤を投与していない時期に、10mm以上の卵胞が存在しないことを確認の上で行う。また、月経または消退出血から10日目までの時期は高LHの検出率が低いことに留意する。
  • 男性ホルモン高値は、テストステロン、遊離テストステロン、アンドロステンジオンのいずれかを用い、各測定系の正常範囲上限を超えるものとする。
  • LH高値の判定は、スパック-Sによる測定の場合はLH≧7mIU/mlかつLH≧FSHとし、肥満例(BMI≧25)ではLH≧FSHのみでも可とする。
    その他の測定系による場合は、スパック-Sとの相関を考慮して判定する。
  • クッシング症候群、副腎酵素異常、体重減少性無月経の回復期など、本症候群と類似の病態を示すものを除外する。

(日本産婦人科学会 生殖・内分泌委員会 2007)


治療指針

挙児希望

(日本産婦人科学会 生殖・内分泌委員会 2009より引用改変)

PCOSは、女性のライフステージにわたってさまざまな疾病を引き起こし、受診年齢や背景によって、主訴や治療目標が異なります。

  • 挙児希望なし
    • 初経〜更年期
      目標 定期的な消退出血を起こさせる。排卵誘発は不要。
      背景 無排卵のためプロゲステロン分泌がおこらず、恒常的なエストロゲン刺激(unopposed estrogen)を受け続けていると子宮内膜がん(子宮体がん)のリスクが高まる。
      治療 ホルムストローム療法(黄体ホルモン療法)または低用量ピル(OC)服用。
      備考 低用量ピル(OC)は男性ホルモン作用の軽減も期待でき、多毛やニキビなども改善。
    • 更年期以降
      目標 合併症の予防。
      背景 肥満の有無にかかわらず、高インスリン血症や脂質代謝異常を伴いやすく、II型糖尿病、メタボリックシンドローム、心血管疾患、脂肪肝などのリスク因子である。
      治療 適度な運動、バランスの良い食事など予防医学的な健康管理。
  • 挙児希望あり
    • 目標 肥満のある方はまず減量・運動、ない方は安全で確実な排卵誘発が必要。
      背景 排卵障害が多い。排卵誘発に伴う合併症も起こりやすい。
      治療 各種排卵誘発および手術療法(腹腔鏡下卵巣多孔術LOD)や体外受精胚移植。