志馬クリニック四条烏丸

志馬クリニック四条烏丸 医療内容 クラミジア感染症

クラミジア感染症

はじめに

性器クラミジア感染症は、クラミジア(Chlamydia trachomatis)が性行為により感染し、主に男性では尿道炎と精巣上体炎、女性では子宮頚管炎と骨盤内炎症性疾患を発症する性感染症(sexually transmitted diseases ; STD)の一つです。


疫 学

  • すべての性感染症(STD)のうちで最も多い
  • 男女とも、無症候の保菌者が多く、無自覚のうちに感染が蔓延している
  • 男女とも、性活動の活発な若年層に多い
  • 口腔性交(oral sex)による咽頭への感染も少なくない
  • 男性の主たる感染部位は尿道と精巣上体
  • 男性の非淋菌性尿道炎の約50%を占める
  • 男性の淋菌性尿道炎の20−30%にクラミジア尿道炎を合併

症 状

  1. 女性:子宮頚管炎、骨盤内感染症
    • 発症時期:感染後1−3週間
    • 無症状のことも多く、感染時期の同定は困難
    • 症状:帯下増量感、不正出血、下腹部痛、性交痛など、時に急性腹症
    • 自覚症状は乏しい場合が多い
    • 子宮頸部に感染後、子宮→卵管→腹腔内へと上行性に侵入し、子宮付属器炎や骨盤内腹膜炎を起こす
    • 上腹部にも感染が及ぶと肝周囲炎(perihepatitis)を発症する
    • 卵管炎は、卵管通過障害による不妊症や異所性妊娠(卵管妊娠)の原因になる
    • 妊婦では、絨毛羊膜炎を誘発し流早産の原因や、産道感染により新生児結膜炎、新生児肺炎の原因になる
  2. 男性:尿道炎、精巣上体炎
    • 発症期間:感染後、1−3週間
    • 無症状のことも多く、感染時期の同定は困難
    • 淋菌性尿道炎に比べ、潜伏期間が長く、発症は比較的緩やかで症状も軽度の場合が多い
    • 軽度の尿道掻痒感や不快感を感じることもある
    • 尿道を圧迫することにより分泌物を確認することもある
    • 男性クラミジア性尿道炎の5%程度に精巣上体炎を併発する
    • 中年以下の精巣上体炎の多くはクラミジアが原因
    • 他の菌による精巣上体炎に比べ腫脹は軽度で、発熱の程度も軽い
  3. 男女共通:咽頭感染
    • 口腔性交(oral sex)により咽頭に感染する
    • 子宮頚管からクラミジアが検出される場合、無症状でも10-20%は咽頭からもクラミジアが検出される
    • 慢性の扁桃腺炎や咽頭炎のうちセフェム剤に抵抗するものの約1/3にクラミジアによる感染が存在し、性器感染に比べ治療に時間がかかると報告されている
    • 咽頭感染がある場合は、しばしば頚部のリンパ節腫張を認める

検 査

  1. 女性:子宮頚管の分泌物か、擦過検体からクラミジア検出
  2. 男性:初尿でクラミジア検出
  3. 共通:クラミジア抗体(IgA, IgG)検査(血液検査)
  4. 共通:咽頭擦過検体からクラミジア検出

    クラミジア:クラミジアの菌体そのものを指す。

    クラミジア抗体:クラミジア抗原を見つけて結合するタンパク分子。クラミジアに抗体が結合すると、この複合体を免疫細胞(=身体の中の警察)が排除して感染を防御する。


治 療

  1. マクロライド系またはキノロン系の抗菌剤を経口投与する
    • ジスロマック錠250mg 4錠(1000mg)単回投与
    • ジスロマックSR成人用ドライシロップ2g(2000mg)単回投与
    • クラリス錠200 1錠/回×2回/日×7日間
  2. 重症例 ミノサイクリン点滴静注
    • ミノサイクリン 100mg×2回/日×3−5日間 点滴静注

注意事項

  • 治療効果判定は、治療後2−3週間以上あけてクラミジアの再検出を行います。
  • クラミジア抗体(IgA, IgG)は、既往感染を反映し、かつ治療後も陽性が一定期間持続するため、現行感染の診断や治癒判定には適していません。
  • しかし、クラミジアが陰性であっても、クラミジア抗体(IgA, IgG)が共に陽性で臨床的にクラミジア感染を疑う症例については治療を考慮します。
  • クラミジア抗体(IgA, IgG)は、共に抗体価が高値になると骨盤内癒着の頻度が高くなるため不妊症のスクリーニング検査としては有用です。
  • クラミジア抗体検査の見方
    • IgA(+)、IgG(-)の場合(A):感染の早期で活動性の感染が疑わしい
      →要治療
    • IgA(+)、IgG(+)の場合(B):感染が活動性で持続している可能性が疑わしい→要治療
    • IgA(-)、IgG(+)の場合(C):感染の既往が疑わしい
      →活動性の感染の可能性はないと推測
    • IgAは治療後も相当の期間陽性が持続することがあり、IgA陽性だけで治療継続の必要はない
クラミジア抗体
IgA
(-)
(+)
IgG
(-)
感染していない
感染の早期(A)
(+)
感染の既往(C)
感染が活動性で持続(B)

当院の方針

  • クラミジア検査は、できるだけパートナーとともにお受けください。
  • クラミジア陽性者の約10%に淋菌感染症を合併するため、同時に淋菌検査もお勧めします。
  • 不妊症のスクリーニング検査でクラミジア抗体(IgA, IgG)が共に陽性で、かつ治療歴がなければ、パートナーと共に治療をお勧めします。
  • クラミジア抗体が陽性に検出された場合に、「いつ」「どこで」「どちらが」感染したかを過去にさかのぼって同定するのは困難です。未来に向けて「これから」「何を」「どうするか」をご一緒に考えましょう。
  • クラミジア陽性の場合は、積極的に子宮卵管造影検査をお勧めします。
  • 子宮卵管造影検査は、クラミジア治療と同一周期はお控えください。子宮卵管造影検査によりクラミジアを腹腔内に拡散させるリスクを避けるためです。翌周期以降に承ります。